平熱通信:旧

ここは世界の片隅にすぎないが、いろんなことが起こる。

なう。

ここは山手線の中。
僕の正面の座席が空いて、そこをめがけて男女が突進してくる。
両者ほとんど同時に座席に到着し、しばらく押し合いになったあと、男性が無理やり座る。
悔しそうな女性(気持ちはわかる)。
女性のことなど気にしていない、いや、むしろいないかのように振る舞う男性。携帯をいじりはじめている。
この局面で、女性がとった行動がちょっとすごい。
よほど悔しかったのか、後に引けなくなったのか、それともその両方か、男性の顔を覗き込むような体勢で中腰になり、かなりの至近距離で顔をにらみつけている。

以上、ほぼ実況中継だ。 どうしよう、ドキドキがとまらない。

世界の片隅から、相変わらず。

「ここは世界の片隅にすぎないが、いろんなことが起こる」

……これは、僕が何らかのサイトを作ると、いつもどこかに書いているフレーズなのである。
いつも書いているくらいなので、気に入っているのは間違いない。なにせ、僕はここ20年くらい、開店休業中のサイトを作るのを趣味としているのだ。そのサイトは、ブログだったこともあるし、大昔はいわゆる「ホームページ」をちまちまと作っていた。マウスカーソルで触れると色が変わるボタンとか、「ただいま工事中」のイラストとか、アクセスカウンター(「あなたは○○人目のアクセスです!」)とか、そういうやつだ。ちなみに、そのホームページとその後の最初のブログには「Citron」という名前を付けていた。まあ、どうでもいい話だ。

「ここは世界の片隅にすぎないが、いろんなことが起こる」というのは、オーギー・レンという人のセリフで、じゃあオーギー・レンというのが何者かというと、『スモーク』という映画の登場人物だ。
そういえば、僕はこのフレーズを、当時の会社の後輩に贈りたかったのだ。「忙しいばかりで面白いことなどなにもない」と毎日伏し目がちにつぶやいていた彼に。
今から考えると、なにを偉そうに何様のつもりだ、という気がしなくもない。僕だって、毎日面白いことばかりだなあ、などと思って生きているわけではないくせに。まあ、当時はそれなりの事情があり、それなりの状況があったのだ。

結局、いろいろあって、そのフレーズは彼に贈られることはなかったのだが、それ以来、僕のサイトのどこかに、このフレーズがこびりつくことになったのだ。どうしてそういうことをしたのか今となっては思い出せないが、悪くない言葉だといまだに思う。


名作がよみがえる!『Smoke デジタルリマスター版』予告編

どうにもこうにも。

忙しい、と声高に叫ぶほどのことはしていないのだけれど、「あれもやらなきゃ、これもやらないと」みたいなことを細々と思い出し、気づいたら朝の7時に出社していたのであった。
自宅を出たのは5時半。まだ暗い。そして眠い。
電車もコンビニも空いているし、駅も通りも空いている。早朝出社も悪いことばかりではない。 そして眠い。