平熱通信:旧

ここは世界の片隅にすぎないが、いろんなことが起こる。

110とI-10。

2010020701

 大昔、フィルムというものがなければ写真が撮れなかったころ、ペンタックスにAuto110というカメラがあった。

 普通のフィルムよりも小型の110フィルムを使い、レンズが交換できる一眼レフのくせに手の平サイズという可愛いヤツである。

 何年か前、ネットオークションで手に入れて、夜中に一人、意味もなくレンズ交換などして「うふふふふ、可愛いヤツ」などとつぶやいたりしていたのだが、現像したフィルムを我が家でスキャンする方法がなかったことと、そもそもフィルムが手に入りにくくなったこともあって、いつのまにか、引き出しの奥で待機状態になっていたのだ(コスト削減のため、我が家では、フィルムは現像だけしてもらい、プリントせずにスキャナで取り込むというのが基本的なワークフローになっているのである)。

 そんなペンタックスが、こんなカメラを発売するという。

 紹介されているページの雰囲気とか、「なにげないものにひかれるわたしの気持ちに近いペンタックス」、「ちょっとレトロで一眼ライクなデザインがお気に入り。」といったキャッチコピーから察するに、いわゆるカメラ女子向けの製品なのだろうが、その、ちょっとレトロで一眼ライクなデザインというは、Auto110によく似ている(特に黒いボディのほうね)。

 似ているからってレンズ交換ができるわけでもないし、だいたい、「狙ってレトロなデザインにしてみました」という感じはあまり好きではないのだが、ちょっと気になっている自分がいることも否定できない。

 それだけ、元祖であるところのAuto110が(少なくとも僕にとっては)可愛いヤツだったということなのだろう。

 それはそれとして、この、ちょっとレトロで一眼ライクなデジカメのI-10であるが、ペット検出という機能があるらしい。ペットの顔を登録しておくと、彼らが正面を向いたときにシャッターが切れるそうだ。

 なんともすごい便利機能だが、応用すると、たとえば「犬顔の人検出機能」としても使えそうな気がする。犬の顔をいくつか登録しておいて、レンズを人物に向ける。シャッターが切れてしまった人を、めでたく犬顔人間として認定するのである。登録している顔と、どの程度まで近ければシャッターが切れるのかにもよるが、ちょっと試してみたい気もする。

 ……というわけで、元祖のAuto100であるが、親指の先(というとちょっと大げさか)くらいのレンズをちまちまと交換していると、思わず笑ってしまうのだ。

 こんな小っちゃいのに、ちゃんと交換できるし、標準だと望遠だの、それなりにレンズの種類もあるのである。

 小さいというのは、小さいだけでなんらかの価値があるのだ。