平熱通信:旧

ここは世界の片隅にすぎないが、いろんなことが起こる。

10回クイズ最新型。

「スプーンって10回言ってみて」

「スプーンスプーンスプーンスプーンスプーンスプーンスプーンスプーンスプーンスプーン」

「スパゲティを食べるのは?」

「フォーク」

「ざんねーん、人間でしたー」

 

会社からの帰路、近くを歩いていた高校生くらいの女の子二人組の会話である。

不意を突かれたということもあるのかもしれないが、二人のやりとりが妙に面白くて、思わず「ふははは」と笑ってしまったのであった。

こうなるともう、10回クイズではないじゃないか。

 

ところでこの、

「スパゲティを食べるのは?」

という問いなのだが、正解から逆算すると、

「スパゲティを食べるのは(誰ですか)?」

というような感じで、括弧内が暗黙の了解として略されているという想定といえる。

この「暗黙の了解」という実態のはっきりしない認識が共有できているかどうかというのがこのクイズの面白味といえるかもしれない。

これが、

「スパゲティを食べるのは(何によってですか)?」

ということであれば「フォーク」も十分答えになり得るし、

「スパゲティを食べるのは(どういう日ですか)?」

であれば、「比較的多いのは休みの前の日かな」というような、出題者の子もびっくりの解答が成立するような気もする。

 

解答者の子は納得がいかなかったようで、「なんだよそれ全然意味わかんない」とか言いながら出題者の子を蹴飛ばしていた(本当にすぱーんと蹴飛ばしたのだ)。出題者の子は笑いながら、「なんでよー、スパゲティを食べるのは人間じゃーん」などと応えていたのだが、それを上回る音量で解答者の子が切った啖呵が実によかった。

「スパゲティなんてなあ、ウチの犬だって食べるんだよ」

そうなのか。

僕が知らなかっただけなのかもしれないけど、世界は小さなサプライズに満ちているなあ、と感心したのであった。