平熱通信:旧

ここは世界の片隅にすぎないが、いろんなことが起こる。

人力オートフォーカス。

普段、ふたつのメガネを使い分けていて、それぞれに名前を付けている。メガネに名前を付けたことによって何か便利になったかというと特にそういうことはなく、単に趣味の問題である。

 

ある程度近いものを見る時用のメガネの名前が「賢そうに見えるメガネ」である。パソコンを使う時はこれをかける。

 

「賢そうに見えるメガネ」よりも遠くのものを見る時に使うのが「いい人そうに見えるメガネ」で、外を歩くときはこちらをかける。

 

自分に欠けているものをなんとか補完したいという願望のようなものがこもったネーミングなので、メガネにしてみたら大変なオーバーワークだろう。

「視力の矯正ならある程度責任を取りますけど、見た目の矯正まではちょっと……」

そんな声が聞こえてきそうだ。

 

「賢そうに見えるメガネ」よりも近くのものを見る時は裸眼になる。携帯を見るとか、文庫本を読むときは裸眼だ。

 

つまり、見る対象の距離によって3パターンの対応策を用意しているわけで、慣れたとはいえ面倒くさい。毎日これだけ面倒なことを強いられているのだから、「賢そうに見える」とか「いい人そうに見える」というようなオプションに少しくらい期待してもバチは当たらないのではないだろうか。

 

ちなみに、「賢そうに見えるメガネ」では遠すぎて見えず、さりとて「いい人そうに見えるメガネ」では近すぎて見えないというややこしいエリアも存在する。見たいものがそのエリアに入ってきたりすると、自分が前後することで対処するしかない。

なんて面倒くさいんだ。