明日の魔法。
もう日付も変わる頃になり、コーヒー豆を買い忘れたことに気付く。
明日のコーヒーは現地(会社)調達だ。
毎朝、その日会社に持っていくコーヒーを淹れているからって、味に敏感なこだわり派だと思ったら大間違いだ。
今日だって、コーヒーの残りが少なかったので、濃度が通常時の三分の二という相当薄いアメリカンを持っていくことになってしまったのだが、
「これはこれでありかも」
「さっぱりとしてていいかも」
などと、わりと納得してしまうようなワタクシだ。おそらく冷静に賞味すれば、今日のコーヒーは「コーヒーの匂いのするお湯」でしかないのだが、変なところが前向きなのである。前向きというより、この場合はあきらめがいい、ということなのかもしれない。ものは言いよう、というやつだ。
とはいえ、この、ものは言いよう、という魔法を使わないと生きにくいのが現在(と書いて「いま」と読む)なのかもしれない(あくまで個人の見解です)。
いやなことや上手くいかなかったことを、「まあ、あとで笑い話のネタになるし」とか「ある意味、貴重な経験?」などと言い換えて、その場をやりすごす。「モノワイイヨウ」、けっこうな防御呪文だ。
今日いちにち、面白いことと面白くなかったこととどちらが多かっただろう。今日起きた面白くなかったことすべて、自分ひとりで受け止められるだろうか。
「貴方に魔法を教えてあげましょう。なあに、簡単な呪文です」
……おっと、コーヒーを買い忘れたというだけの話から、ついつい大げさなテーマをでっちあげようとしちまったぜ。あぶないあぶない。