平熱通信:旧

ここは世界の片隅にすぎないが、いろんなことが起こる。

浮世。

うきよ【浮世】
①つらくはかないこの世の中。変わりやすい世間。「━の荒波」
②今の世の中。俗世間。現世。「━の義理を果たす」「━のしがらみ」

大辞林 第三版(抜粋)

……というわけで、そろそろ夏期休暇も終わる。
現世に帰る前に体力を蓄えなくてはならない。その上「くそう会社に行くぞう」という覚悟をするにも時間がかかる。
ということで、今日は一日だらりとして過ごすことにした。まあいつも通りといえなくはないが、英気を養うという大義名分がある分、今日のだらり具合は本気度が違う。
「もうなにもするものか」
と、思わず声に出してしまうほど気合いが入っている。続けて、
「トイレ以外の用事で立ち上がるものか」
ともつぶやいてみたが、さすがにそれはいかがなものか、と自分の中のもうひとりの自分が異議を申し立て、上記の「トイレ以外の用事で立ち上がるものか」 という宣言はひとまず撤回された。
端からみたら黙ってのんびりしているだけのように見えるだろうが、頭の中はそれなりに忙しいのである。

「今日はそういう日だから」
と家族に宣言し、昼間から窓とカーテンを閉め、薄暗い部屋でエアコンを効かせてDVDを5枚ノンストップで観る。もちろんごろ寝をしながらだ。そしていうまでもなく片手には発泡酒である。
酒が入ることでいっそう動くのが面倒になり、たまたまつま先付近に転がっていたエアコンのリモコンを足の親指で操作しようとして足がつったりした。足の親指、人差し指コンビが上向きに、中指、薬指、小指トリオが下向きに同時に反ったのである。そのままの形で固まってしまった左足を見たときには、これはヤバいかも、と思ったものだ。声を殺して痛みに耐えてながら泣けるDVDを観るというのはなかなか貴重な体験であった。カレーのトッピングとして粒あんを乗せたようなものだ。辛いんだか甘いんだか、もうなにがなんだかわからない。

気合いを入れてだらだら過ごそうとした結果、妙に疲れた一日になってしまった。そういえば、気合いを入れたり張り切ったりすると空回りするタイプなのだ。わかりきった自分の性質なのになかなかうまくコントロールできないものだ。これは僕がとびきり不器用なのか、それとも「そういうもの」なのか、なんとなく気にならなくもない。
それはさておき、今回の「ひとり映画祭」はなかなか面白かった。またやってみてもいいような気がする。