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平熱通信

ここは世界の片隅にすぎないが、いろんなことが起こる。

ロボット行方不明。

愛用しているビニール傘のグリップ部分には、他人のものと見分けるためにシールが貼ってある。
スター・ウォーズ』に出てくる「BB8」のシールで、なにかのオマケでもらったものだ。
傘をさした状態にあわせて貼ったので、傘立てに立てるとBB8の上下が逆になる。しばらくはそれが妙に気になり、「あれでは頭に血がのぼる」と心配していたのだが、よく考えてみれば(いや、よく考えなくても)彼(彼?)はロボットなのだ。おそらく上下が逆になっても体調に影響することはないだろう。

……などと安心していた矢先、僕の傘から、BB8が忽然と消えたのである。BB8脱走だ。
ボールのようなボディをコロコロ転がして、東京のアスファルトの道を疾走するBB8。頭に相当する部分にはマンガでよく使われる記号の「焦ったことを表す汗みたいなやつ」がくっついている。……なんて想像すると大変にかわいらしい。
シールはけっこうしっかりと貼ってあったので、自然にはがれたとはちょっと考えにくい。なにせビニール傘なので世の中に同じ形のものが大量にあることを考えると、僕がどこかで誤って他人のビニール傘と取り違えてしまった、というのが妥当な推理になるような気がする。まったく、なんのためのシールなのだ。

僕はあらゆるものにおいて、その距離感の正確性に関しては比較的おおらかなスタンスをとっている。要は距離感がいいかげんで、歩行中に人や物にぶつかることが多かったりするのだ。
傘立てから傘を取ろうとして、誤ってその手前の傘を手にしてしまう、などということはいかにもやりそうなことだ。
Excelで操作を誤ってしまったので「元に戻す」ボタンを押そうとして、その隣りの「上書き保存」ボタンを押して気絶しかけたことがある、というとわかる人にはわかるかもしれない。

まあとにかく、その仮説が正しければ、BB8は他人の手に渡ってしまったと思うべきだろう。できれば、新しい持ち主がシールをはがしたりせず、BB8が健やかな余生を送れることを希望したい。というか、新しい持ち主の方には、この場を借りて謝っておきたい。どうもすいませんでした。でも、傘にシールが貼ってあるとけっこう便利ですよ。

さて。
BB8不在の我がビニール傘にも、なにかシールを貼りたいところだ。
貼りたい気持ちはヤマヤマなのだが、普段、シールに縁のない生活を送っている中年男性は、余分のシールなど持っていないのである。
偶然手に入れたとはいえ、BB8はかなり気に入っていたので、その後釜にも、なんというか、「それなり」のものを準備したい。
なるべくはやく、無料で、「それなり」のシールがうまいこと手に入らないだろうか。粘着力が強力で、僕がうっかり他の傘を手に取ったときなどは「ソレハチガイマスヨ」と教えてくれるような(それはもはやシールではないな)。
自分で書いておいて無責任な話だが、そもそも「それなり」ってのが我ながらよくわからない。BB8のシールを超える「なにか」なのだろうが、書いてる本人が上手くイメージできないものが偶然(それも無料で)手に入るほど、世の中は甘くないだろうなあ。