平熱通信:旧

ここは世界の片隅にすぎないが、いろんなことが起こる。

意外と手ごわい青りんご。

先週の風邪の影響で、まだ少しノドが痛い。
なので、薬局で買ったノド飴をなめながら仕事をしているのだが、これがけっこう僕のお口にあうようで、妙に美味い。
いや、美味いというよりも、ちょっと目新しくて面白がっているのかもしれない。青りんご味なのだが、なめているとスーッとしてくるのである。あれ、こうやって書くとそんなに目新しくもないか。まあ、青りんご味の飴なんて普段は買わないから、ちょっと新鮮な気分になっているだけなのかもしれない。

まあ、なんにせよ、このノド飴が期間限定マイブームなのは間違いなく、ついついなめ続けてしまうのだ。ひとつなめ終ると、あまり間をあけずに次のノド飴を口に入れてしまう。
どうせ、ノドの痛みが治まれば僕とこのノド飴との関係は終わってしまうのだ。
「それならばこの刹那を楽しもうぜ」
……いや、かっこよく言う必要は特にないのだが、ノド飴の封は次々と切られていったのである。

ところが、だ。
あれはいくつ目のノド飴をなめていた時のことだったか、軽ーくお腹が痛くなってきたのだ。あまり品のいい言い方ではないのでできれば使いたくないのだが、この痛みの感じ、規模感を伝えるにあたって一番確実に書き手の気持ちが伝わると思われるのであえて書くと、「トイレ1回で解消できる」レベルの痛みである。
腹痛が起きたタイミングから考えると、直近でお腹に入れたノド飴が疑わしい。
「まさか、飴って腐るのか?」
仮に飴が腐るものだとして、一昨日買ったノド飴が腐っているとは考えにくい。いや、消費期限切れのものを売っていたのかも。
あわててノド飴の箱を確認する。
消費期限が記載されている箇所を探していると、それとは別のところにこんな説明文を発見した。
「服用の間隔は、必ず2時間以上あけてください」
……2時間あけずに服用するとどうなるのか、それについての記載はなかったのだが、もしかすると、お腹が痛くなるのかもしれない。
僕は、ノド飴の箱を引き出しにしまい、ゆっくりと立ち上がった。
トイレに向かったのである。

飴といえば。
どういうわけか、僕は、飴を最後までなめられない人間なのである。口の中の飴がかなり小さくなったところで、つい、ぼりぼりと噛んでしまうのだ。
この件については、ずっと「せっかちなのかもしれないなあ」くらいに考えていたのだが、よくよく考えると、アーモンドチョコレートは口の中でチョコレートを溶かしきってから食べるのである。飴とチョコレートでは溶ける時間が違うとはいえ、そういうことを待つ忍耐力がないわけではないのだ。
これはつまり、最後までなめられないというより、単に、小さい飴を噛むのが好きなのだろう。普通に生活していれば目にすることのないであろう、自分のワイルドな部分を、飴を噛み砕くことで極小レベルで体感しているのかもしれない。……ええ、考えすぎですね。

ところで、ノド飴の箱にはこんなことも書いてあるのであった。
「服用する際は、噛み砕かず、ゆっくりと口の中で溶かしてください」
……ノド飴、難しいなあ。