平熱通信:旧

ここは世界の片隅にすぎないが、いろんなことが起こる。

運命を知りすぎた男。

会社の最寄り駅の駅前広場に、今風にいうところのデジタル・サイネージ、つまりは広告や様々な情報を映像で見せてくれる巨大看板がある。
僕は勤め人であるからして、毎日同じような時刻に家を出て、同じような時刻に駅を出る電車に乗り、同じような時刻に会社に着く。電車の遅延でもないかぎり、その時刻が大幅に変わることはない。なので、だいたい同じような時刻にその巨大看板を見ることになる。
それはつまり、どういうことなのか。

僕がその看板の前を通るとき、かなり高い確率で占いの映像が流れているのだが、自分の誕生月である6月の占いを見たことがないのである。
僕が見ることになるのは、おおむね9月。

ということで、僕は9月生まれの人の運勢についてはけっこう詳しいのである。
「9月生まれは白のブラウスと金色のアクセサリで仕事運UP!」
くらいのことならスラスラ言えるのである。
ちょっと残念なのが、この情報が僕にとってイマイチ使い道がないところなのだ。

使い道のない情報だから無駄だ、ということもないのだが、ここまで9月生まれの人の運勢について詳しくなっているのに、6月生まれの運勢について何も知らないのはなんだか惜しい。
一瞬、
「ならば! ウチを出る時間をもっと早くして、6月生まれの運勢に間に合うようにしてやんよ!」
というような考えが頭をよぎったのだが、なんだかものすごく本末転倒なような気がするので実行はしていない。
そもそも、この占い、女性向けっぽいのである。