平熱通信:旧

ここは世界の片隅にすぎないが、いろんなことが起こる。

これも東京。

「おでん種のちくわぶは、買ってまで食べたいとは思われない不憫なやつ」
「それどころか、「ちくわぶが好きだなあ」などと発言したら、笑われたり馬鹿にされたりすることもある」

……というようなことを先日書いたわけだが、少なくとも我が家付近では普通に買える食品なのである。
コンビニおでんの仲間にも入っているし、スーパーのおでん種コーナーで、ちくわぶが置いていないところを見たことがない。
「買ってまで食べるものではない」わりには「どこにでも置いてある」というのが、ちくわぶの面白いポジションであるといえる(もちろん、僕の数少ない知人の声と、狭い行動範囲内での印象でしかないのだが)。
ふと気になって、インターネットで「好きなおでん種ランキング」的なサイトをいくつかみつくろって確認してみたのだが、大ざっぱにいって、ちくわぶの順位は低い。僕が見たサイトでの平均でいえば、15位くらいなのではないだろうか(そのかわり、ランクインしていないサイトもなかった)。
メンバーには入っているんだけど人気がない。いってみれば、大所帯の女性アイドルグループで、結成時から在籍していたにも関わらずなかなか注目を浴びることができないでいる娘のようなものなのかもしれない(例えがおかしかったらごめんなさい)。アイドルとして活躍できなかったら、(それはそれで簡単なことではないのだろうけど)思い切って卒業して別の道を歩むこともできるかもしれないが、ちくわぶはおでんを卒業しても他の道は見つけにくいような気がする。

ところで。
これまた近所のスーパーでの調査結果なのだが、おでん種を数種類セットにした商品をいくつか確認してみたところ、だいたい5個から8個あたりが一人前の目安のようだ。ということはつまり、ランキングでベストテンに入るのも危ういちくわぶが、おでん一人前のメンバーに選ばれる可能性は高くないということになる。
全国規模のランキングの結果を見れば、そういう結論になるだろう。

あれやこれや書いてみたが、結局のところ、ちくわぶは東京のローカルな食べ物なのだ。
あえて言えば粘土のようなあの素材感と、独特の食感は、子供のころから親しんでいないと好きになりにくいのかもしれない。
東京に住んでいて、ちくわぶ否定派の声をたくさん聞くというのは、つまり東京がそういう街だということだ。いろいろなところから集まった人が住んでいる街だからこそ、そういう声が聞こえてくる。そういう声が世論を動かし、ちくわぶが販売禁止になる……なんてことが起きるとファンとしては困ってしまうが、まあ、そういうことも当面はないだろう。
僕は、年に数回、ちくわぶをもちもちくちゃくちゃと食べられればそれでいいのである。よほどひどい内容でなければ、みんなが思い思いにいろんなことを言うほうが世の中は真っ当なのではないか、と個人的には思うのだ。
前に書いたかもしれないけど、ちくわぶって「食べないと人生の半分損をするよ」という類の食べ物ではないし。

唐突ではあるが、このブログの連続更新記録が、今回でちょうど100回になるのである。
区切りもいいし、当「平熱通信」は今回で最終回ということにした。

ちらりとでも読んでくれた方、どうもありがとうございました。とてもうれしかったです。
とはいえ、僕はここウン十年、自分のサイトを欠かしたことがない(開店休業状態のものばかりだったけど)ので、しばらくしたらまた新しいサイトを立ち上げるような気がします。その時に、縁があったらまたよろしくお願いします。

それでは。