平熱通信:旧

ここは世界の片隅にすぎないが、いろんなことが起こる。

雨の日のヒトだってとことん眠い。

朝から雨が降っているような日に、必ず思い出す本のタイトルがある。

まだ実家にいた頃、『雨の日のネコはとことん眠い』という本がとても好きで、繰り返し読んでいた。

とはいえ相当昔の話なので、内容はよく覚えていない。猫の生態について、わかりやすく、ユーモアを交えつつ綴られた本……であることに間違いはないはずだ。気に入って何度も読み返したのなら、少しでも内容を思い出せればいいのだが、思うようにいかないのが人生である。いや、開き直ってるわけではないのだが。

おそらく、この本から得た猫知識、猫雑学は、僕の頭や体の奥深くに染み込み混ざり込んでしまったので、今、改めて「この本から得たモノ」を体内から取り出そうとしても上手くいかないのだろう。


それにしても、『雨の日のネコはとことん眠い』とは、実に素敵なタイトルではなかろうか。

ちょっとやそっとの眠気ではないのである。もう「とことん」眠いのだ。これはもう、ひっくり返してもまっすぐに伸ばしても起きないくらいの眠さなのだろう。こうなるともう、肉球も触り放題だし、唇をめくってのキバ見物も思いのままだ。

加えて言わせていただければ、雨の日にとことん眠いのは猫だけではない。僕だって眠い。今日みたいに朝から雨が降っているような日は、フトンから出るのにいつもの倍くらい時間がかかる。なぜなら、とことん眠いからだ。

残念ながら、僕のまわりに「降雨性睡眠誘導症候群」(今、名付けました)の人はいないようで、この手の話をすると結局のところ、「あんま夜更かしすんなよ」とか「雨降ってると会社行くのめんどくさくなるよね、わかるわかる」とか、僕に言わせれば実に見当違いな結論に着地してしまうのだ。


そうではない。

雨の日は、無条件に、とことん眠いのだ。

今だって、会社の机の下の空間に、香箱つくって眠ってしまいたい衝動と必死に戦っているのである。