平熱通信:旧

ここは世界の片隅にすぎないが、いろんなことが起こる。

自分より歳が下なら女の子。

会社の帰りに駅で見かけた女の子は、とても急いでいた。

左肩にカバンを下げ、右腕をぶんぶんと振り、もう小走りといっていいほどすばやく足を動かしていた。その瞳はまっすぐ前を向き、その視線の先には改札口がある。とても急いでいることが全身から伝わってくる。

が。

不思議なことにその女の子と僕との距離は開くことはなく、人波をすりぬけて消えていく彼女の姿を見ることはついになかった。僕のやや前方右側にいた女の子は、その距離感を維持したまま小走りを続け、結局のところ僕よりややはやく改札を通り抜けていった。

どうも、致命的に足が遅い女の子だったようだ。

まあ、小柄な体格だったから、ということもあるのだろうけど、あれだけ足を高速稼働させて、あの速度というのはすごい。「前進するその場足踏み」くらいのスピード感だ。

何をそんなに急いでいたのか知る由もないが、その真剣なまなざしと、真一文字に結ばれた唇を見てしまった者としては、その全力疾走が無駄に終わらないことを祈る。

 

女の子といえば。

ここ数日、浴衣の女の子を見ることが多くなってきた。とてもいいことだ。個人的な好みをいえば、あまりアレンジを加えた着こなしではなく、ごくオーソドックスな装いがよろしいのではないかと思う。

旅館の浴衣をインチキに着たことがあるくらいの素人なので、しっかりと真面目に浴衣を着ることがどれくらい大変なのかよくわからない。たとえば、着るのに手間がかかるとか、洋服よりも着ていて暑いとか、そういう大変さがひょっとしたらあるのかもしれないが、個人的には、女の子は半年くらい浴衣を着ていてもいいと思う。たとえば、春先から秋の終わりまでとか。

あ、そうだ。会社のクールビズ期間と合わせるというのはどうだろう。なかなかいいアイデアだと思うのだが。少なくとも個人的には大賛成なのだが。

 

浴衣の女の子といえば。

どうしても思い出してしまうのがアニメ版の『時をかける少女』である。

たぶん、主人公の真琴が浴衣姿になるシーンはなかったと思うのだが、浴衣にまつわるセリフがとてもいい。とてもいいんですよ。あ、つい二回も書いてしまった。

 

時をかける少女』の主人公の女の子といえば。

こっそり練習している真琴の物まねがそろそろ完成しそうなのである。完成したからといってどこかで披露することはないのだが、その着眼点(「え、そこをまねするの?」という意味で)はなかなかのものだと自負している。先日の国立博物館での野外上映会でヒントをつかんでから、地道に練習した甲斐があったというものだ。

 

だからなんなんだ、という話ばかりなのだが、意味がないのは昔から得意なのだ。