平熱通信

ここは世界の片隅にすぎないが、いろんなことが起こる。

日曜の午後、川沿いを歩く(暑いのに)。

仕事が終わり、会社を出たのは14時半。

予想通りというかなんというか、外は暑い。

ただし天気はいい。天気がよくて暑ければ、まあしょうがないか、という気にもなる(ならないか)。

 

そういえば、この時間帯に会社の外を歩くというのはけっこう珍しいことのような気がする。仕事中に外出する用事がまったくないわけではないけれど、14時台というのはあったかな。

これから帰って、自宅に着くのは16時。

なんとなく中途半端に思えてしまう時刻である。いやあ暑かったとか言いながらビールを飲んで、そのままなんとなく一日が終わる。まあ、悪くはないけど。

そんなことをぼんやり考えながら炎天下を歩く。ぼうんぼうんとした熱気が体にからみつく。

突然、どこからか風が吹いてくる。

それにあわせるように、そういえば、あのコンビニの裏が、川なんだよな、と突然思い出す。

よし、ということで、少し寄り道をすることにした。

 

なんとなく川沿いを歩く。

駅とは反対方向なので、少し遠回りになる。

日曜ということが関係あるのかどうかわからないけど、人通りはあまりない。まあ、暑いしねえ。

 

海のにおいがする。風が吹いてくる。快適とはいわないが、思っていたより歩きやすい。

空の青、川面の黒……いや、チョー濃い紺か。まわりのビルのチョー薄いグレイ。晴れているので、どの色にも迷いがなく、くっきりと自分の色を主張している。こういうときは、適当にシャッターを押してもなんとなくいい感じに見える風景写真が撮れる。風景写真というか、お散歩スナップ写真というか。

 

しばらく歩くと船着場があり、小さな船が何艘かその身をゆらしている。見事に統一感のない揺れ方だ(なんとなく、規則性のある揺れ方をするものだと思い込んでいた)。屋形船なんかもあるから、小さな船というくくり方はやや雑かもしれない。

船着場のそばのベンチでは半裸の男の人がうつ伏せになって寝そべっている。

一瞬、熱中症で倒れているのかと心配になったが、サングラス着用、頭のそばにラジオ設置、背中に妙に照りがある、という状況証拠から、この人は現在日焼けに挑戦中、と推測する。

 

船着場、揺れる船、背中をあぶる半裸の男。

これが都会にある会社のビル付近の風景だというのがすごい。まあ、東京にもいろいろあるということだ。

都会に憧れて地方都市から上京してきた若者をここに連れてきて「ようこそ東京へ」などと言ったらガッカリするだろうか……と、簡単には答えが出なさそうな上にがんばって考えるほどの価値もないようなことを考えつつ、半裸の男のそばを通り過ぎる。

 

空が青いとか海のにおいがするとか言っては遠回りして歩く。それはつまり日頃ものすごいインドア派だからなんだよな、ということを思い知る。 

日頃馴染みがないからこそ、夏の午後の川沿いにある諸要素にいちいち反応しているのだろう。

 

僕の歩く先に相変わらずまっすぐに川は流れているが、そろそろ左に曲がらないと駅に着かない。

少し先に幅の広い橋が架かっている。それを渡って駅に向かうことにする。

橋を渡りながら、未練がましく海のにおいを嗅ぐ。