平熱通信:旧

ここは世界の片隅にすぎないが、いろんなことが起こる。

虹を見たかい。

 娘プロデュースで奥さんの誕生祝いをする。

 食事のメニューを決めたり、ケーキを選んだり、部屋の飾り付けをしたりの大活躍である。

 僕は基本的にサポートに徹していたのだが、下手に出て言うことを聞いていると、娘の態度がどんどんデカくなっていくのが面白かった。

 最初は、

「ちょっとお水くんでくれる?」

 とか、

「お肉切るのやってもらっていい?」

 とか、割と丁寧なお願いぶりだったのだが、いつの間にか、

「水! 塩!」

 と、名詞だけで命令するようになり、

「ちょっとこぼしたとこ拭いて! そこじゃない、何やってんの!」

 と、お前はブライトさんかと言いたくなるような上から目線である。

 なんでしょう、この態度の変化の速さ。

 これが女の怖さってやつなんでしょうか。

 ところで、娘が選んだプレゼントは、なんと説明していいのかよくわからないのだが、簡単にいうと、

「手の中に生まれる、はかなくてキレイな虹」

 という魔法であった。

 まったく、こんなものをどこで見つけてきたのやら。