平熱通信:旧

ここは世界の片隅にすぎないが、いろんなことが起こる。

青い空、白い雲、金色の酒。

 ひょんなことから、外で昼食をとることになった。

 それも一人である。

 こんなことはめったにないので、僕の考える、正しいオッサンの一人メシを実践することにした。

 まず、酒屋で安売りしている発泡酒を購入。

 そのまま、近くのデパートの屋上に向かい、売店でうどんを買う。

 ……ここまで書いてみて、これが本当に「正しいオッサンの一人メシ」なのかどうか自信がなくなってきた。

 ちなみに、ここのうどんは、このへんでは一番美味いという人もいる隠れた逸品らしい。

 要は、繁華街にしてはさびれた感じのする屋上で、発泡酒片手にうどんをすするという、ちょっとわびしい感じを味わいたかったのである。

 天気がよくて、日差しは強いけどほどよく風もある。

 こういう状況でビール(正確には発泡酒だが)を飲んだりすると、あまりにも心地よくなってしまい、ふと「ああ、このまま消えてしまってもいいかも」等と思ってしまうことがある。

 昼寝をしていて、おそろしく寝心地がいいと、「ああ、このまま目が覚めなくてもいいかも」と思うこともあるのだが、どちらにしても、思うだけで何がどうなるわけではない。当たり前か。

 空は青く、デパート屋上から見える他の建物や、そこから伸びるアンテナがピカピカと光っている。

 ちょっと写真を撮ってもいいなあ、と思ったのだが、こういう時に限ってカメラがない。

 僕の携帯にはカメラが付いていないので、こうなるともうどうしようもない。

 つまり、青い空の下でビールを飲むと美味い、という話である。

 ……正確には発泡酒だが。