平熱通信:旧

ここは世界の片隅にすぎないが、いろんなことが起こる。

正しい金曜の大逆転。

仕事の合間に買ったコカ・コーラに「世界でいちばんの大逆転」と書いてあった。どうも一本ずつ違うコメントが書いてあるらしい。僕が買ったコーラに書いてあったのだから、これは僕に向けたメッセージというか、キャッチフレーズのようなものだと理解していいのだろう。先日買ったコーラには「世界でいちばんのマネージャー」と書いてあって、華があるようなないような、主役なんだか脇役なんだかわからないような、とても微妙な気分になったものだ。

それにしても「世界でいちばんの大逆転」とは。
こうなるともうメッセージというより予言に近い。なんなんだ大逆転て。何が起きるというのだ。

正直にいうと、そんなもんはいらんのだ。

「無事」とか「無事故無違反」とか、それこそ「平熱」という言葉が好きなこのワタクシである。体質的に、大逆転という言葉とは相性がよくないと思われる。
そもそも人一倍気が小さく人見知りなこのワタクシだ。突然、大逆転な状態に叩き込まれたらそのショックで心臓が止まるかもしれない。今、心臓が止まるのはまずい。『ゴースト・バスターズ』の前売り券を買ってあるのである。

ましてこの予言の真意が大逆転負けを意味していたらどうしよう。
勝負的要素が皆無な人生を送っているので、日々の生活で勝つこともあまりないかわりに大負けすることもないはずなのに。平和で、フラットで、枯れているともいえる我が人生なのである。
なのでそもそも、大逆転と自分の生活がどうリンクするのかよくわからないのだ。

あ。
たとえば、会社から帰宅したら、飼い犬のくりさんと飼い主たる僕の立場が逆転しているとしたら。
いつもは、飼い主の足にしがみついて、
「ちょっとでいいのでおやつくだたい」(←もちろん犬語で)
などと言っているくりさんが、今日は仁王立ちのいばり顔で、
「さあ、さっさとおやつを出すがいい。ちょっとでいいからな」(←同上)
とか言ったとしたら。

……おそるべき大逆転だが、なんだか面白そうな気がしないこともない。